「一日のなかで誰か一人は笑わせたい」~温かな理念の元に集まる、温かな人たち。
障害児訪問保育アニー 看護師
佐藤 由依
2020年12月1日入社。
千葉県の訪問看護(老年期)ステーションを経験。小児は、新卒時よりNICU(新生児治療室)とGCU(回復治療室)の病棟にて経験を積む。
(こちらの記事はライター・エッセイストの碧月はるさんにご取材いただいたものです)
新しい職場、環境に足を踏み入れるとき、不安や緊張がゼロな人はきっといないでしょう。職種自体は同じであっても勤務形態が異なったり、仕事内容がガラリと変わる。それは特に珍しいことではありません。
新しい物事を始める。それは本来素敵な挑戦であり、わくわくするものです。しかし、そういうきらきらした気持ちが不安で覆われてしまうのは、何とも勿体ないと思うのです。
不安や悩みを払拭するために必要なものは何か、どのような環境であれば人はのびのびと自身の望む仕事を楽しめるのか。認定NPO法人フローレンスが立ち上げた「障害児訪問保育アニー」で訪問看護師として働く、入社四ヵ月目の佐藤由依さんにお話を伺いました。
「障害児訪問保育アニー」で働こうと思ったきっかけと、入社前に抱えていた不安
アニーに入社したいと思ったきっかけを教えてください。
佐藤:元々はNICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児回復治療室)で勤務していたのですが、在宅看護にずっと興味がありました。看護学校の実習の時、在宅看護が一番楽しかったんです。臨床指導の方がすごく恰好良くて、この人みたいになりたい、こういう看護師さんになりたいと思ったのがきっかけです。仕事に対する誇り、プロフェッショナルの覚悟を持っている人でした。また、子どもと関わりたい気持ちも強くて、アニーでのお仕事は自分がやりたいと思う形の最終形態に近づいている感じがありました。そんななか、ネットでの検索でアニーに辿り着き、入社を決めました。
入社前に抱えていた不安や心配ごとなどはありますか?
佐藤:訪問看護ステーションでは、高齢の方の看護をしており、小児看護の仕事を三年離れていました。また、元の畑がNICUなので、生まれたての赤ちゃんだったんですね。アニーだとそれよりもう少し大きい子ども達と関わることになるので、成長発達の段階の違いもあり、うまく対応できるかな、という不安がありました。
「障害児訪問保育アニー」の研修制度について
アニーには研修期間があると伺っています。研修内容について、詳しく教えてください。
佐藤:現場で先輩に同行して、マンツーマンで直接訪問看護の指導を受けます。医療機器の対応の仕方や、その子個人の性格や特徴という細かい部分も含めて、現場で都度都度教えてもらえます。現場でのOJТがとても楽しくて、保育士さんの目線などもとても勉強になります。
また、本部での全体研修も充実しています。保育研修、重症心身障害児についての研修、救急救命研修など、様々な研修が用意されており、看護や保育、療育に関する社内、社外の研修を通して実践的な知識を身につけることが出来ます。
また、アニーの特徴として、一人の子どもを数人の看護師で担当しているのですが、複数の担当がいることにより、様々な目線からのアドバイスがもらえます。「ここ気を付けた方がいいよ」「こんなふうにするといいよ」など、チームで見ているからこその広い視野があり、すべてを取り入れた上で自分なりにアレンジしつつ、学んだ内容を現場で活かしています。
研修期間はどれくらいですか?
佐藤:およそ二ヵ月間です。ただ、担当するお子さんによって早めに独り立ちをする場合もあれば、その逆もあります。自分が不安だから「もう少し同行させてほしい」と自ら頼んだこともあるし、先輩ナースのほうから「ここはもう一度くらい誰かと一緒に行ってみようか」と声をかけてもらうこともありました。
「障害児訪問保育アニー」の雰囲気、印象について
佐藤さんから見ての、アニーのチームの雰囲気や印象を教えてください。
佐藤:みんな、めちゃめちゃいい人です。病棟勤務の頃にすごく話しやすい先輩や仲のいい同期がいたんですけど、アニーはそういう人たちが全員ぎゅっと集まったような感じです。
それは最高ですね!
佐藤:ほんと、最高です!とにかくみんな話しやすくて、毎日とても楽しいです。アニーに入社してから、すごく早起きになりました。働く時間が日の出から日の入りまでの日勤帯ということもあるんですけど、わくわくしすぎて、まるで遠足の前の日、という感じです。
ミーティングやカンファレンスのときの雰囲気はいかがですか?
佐藤:みんな一旦聴いてくれる姿勢を持っているので、すごく意見を出しやすいです。全部の意見を集めてから、「じゃあこれはどうする?」「こっちはちょっと違うよね」など、削ぎ落としたり付け足したりというバランスがとても上手だなとミーティングの度に感じます。そのおかげで、「私は言わなくてもいいかな」「この問題はどうしよう」と迷わずに済みます。
一旦、受け入れてもらえる。相手側にその姿勢があるかないかで、悩み事を発信できるかどうかのハードルは大きく違ってきます。どのような職種であれ、新人の間は悩み事に限らず、業務に対するあらゆる物事を先輩に聞きながら学んでいくものです。そんななかで、質問しにくい、意見を出しづらいといった雰囲気では、到底わくわくした気持ちで仕事をするなど叶いようもありません。
アニーのチームは入社してすぐの頃から打ち解けやすかった、とお話される佐藤さん。それは相手が誰であっても変わらない、分け隔てないものだと言います。
「ちゃんと見守っているよ」その気持ちが肌で感じられる、絶対的な安心感
佐藤:現場スタッフだけではなく、スーパーバイザーという、病棟で言えば主任さんや師長さんに当たるような人たちも、みんなフラットで話しやすいんです。上の人だから話しにくいということもなく、誰だから聞ける、聞けないというのがない。チャットツールなども使いながら、誰もがその場に応じて即座に対応してくれます。
立場、役職を問わず誰とでも話しやすい雰囲気というのは、素晴らしいですね。
佐藤:そうですね。最後まで見捨てず、細かいところまで拾ってくれる。言葉にして言われたわけではないんですけど、「ちゃんと見守っているよ」という想いがひしひしと伝わってきます。そこに絶対的な安心感があるので、私のような新人でも、のびのびと現場で働かせてもらっています。働きやすいってこういうことなんだな、と日々思います。
アニーの看護スタッフにはそれぞれあだ名があり、そこにも空気を朗らかにする要素があると佐藤さんは言います。
佐藤:お子さんたちが呼びやすいあだ名をそれぞれ持っているのですが、現場だけでなく普段からお互いをあだ名で呼びあっているんですね。元々コロナ禍での入社だったので、集まるのはやはりオンライン上でとなってしまうのですが、対面するのが「はじめまして」であっても全然そういう感じがなくて。「ゆっぴー、元気?」などと気さくに声をかけてもらえるので、とても嬉しいです。あだ名で呼ぶっていうのがすごく新鮮で、そこも隔たりを感じずに楽に入っていける要素かなと思います。ただ、本名とあだ名にギャップがある人がいて、あだ名から先に覚えるので、本名なんだっけ?となることがあります。そこが唯一苦労している点です。
入社前に抱えていた不安は、毎日が楽しすぎてあっという間に吹き飛んでしまったとのこと。くしゃっと目を細めて笑いながら、嬉しそうにお話してくれた佐藤さん。その口からは、数えきれないほどの「楽しい」という言葉が溢れ出ていました。
大きな安心に包まれて働ける環境。それは、その人が持つ本来のポテンシャルを存分に発揮するために最も必要な土台です。アニーの現場は、その土台作りがしっかりとなされていることが伝わってきました。
笑顔の咲く職場、それをつくるのは❝ひと❞である
佐藤さんがお仕事をされるなかで大切にしていることを伺ったところ、こんな答えが返ってきました。
佐藤:一日のなかで誰か一人は笑わせたい。その気持ち、それだけでやっています。
笑わせたい。それは人の笑顔、ひいては幸せを願っているということ。そんな温かい想いを大切にしながら働いている佐藤さんの表情は、まるで向日葵のようにパッと明るく、その場を照らしてくれました。現場でお子さんやスタッフの方々と接するときも、日溜りのような朗らかな人柄がたくさんの笑顔を引き出しているのでしょう。
仕事内容を覚える上でも、継続して働く上でも、スタッフ間のコミュニケーションは必須です。「障害児訪問保育アニー」のお仕事は、看護師同士だけではなく、保育士や他業種との連携も必要になります。それぞれが互いを尊重しあい、耳と心を傾ける姿勢を持ち合わせているからこそ、スムーズに業務が行える。その柔らかな空気感をつくっているのは、しっかりしたフォロー体制と、❝ひと❞です。どんなに体制が整っていても、働く人同士がギスギスしていたのでは笑顔も曇ってしまいます。また、その逆も然りです。
「いろんな家族の笑顔があふれる社会」
認定NPO法人フローレンスが目指している社会です。温かな理念の元に、温かな人たちが集まる。それは必然なのかもしれません。
たくさんの笑顔の花が咲く、春のような空気のなかで、あなたも新しい一歩を踏み出してみませんか。
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書いた人:碧月はる
ライター、エッセイスト。書くことは呼吸をすること。メディアにエッセイ、映画コラムを寄稿しています。
その他、noteにてエッセイ、小説を執筆中。note内私設コンテスト「Muse杯」Muse賞(グランプリ)受賞。
海と珈琲と二人の息子を愛しています。
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