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【医療的ケア児保育の輪を広げる】渋谷区より依頼を受けノウハウを認可保育園へ提供、2年目の取り組み

2021.07.29

医療的ケア児保育の受け入れが拡大 フローレンスはノウハウを提供

生きていくためにたんの吸引や経管栄養(チューブやカテーテルなどを使い、胃や腸に必要な栄養を直接注入すること)などの医療的なケアを必要とする「医療的ケア児」という子どもたちがいます

新生児医療の発達とともにその数は増加傾向にあり、全国に約2万人いると言われています

医療的ケア児を取り巻く課題の中でも預け先の不足は深刻で、両親が仕事を諦めなければならないことが社会課題となっています。

フローレンスでは2014年に日本初の障害児専門の保育園「障害児保育園ヘレン」を立ち上げ、翌年からは障害児訪問保育アニーを運営し、障害児保育事業のパイオニアとしてこの問題に取り組んできました。

障害児保育園ヘレン初台でのお預かりの様子 (オーガンジー遊び)

最近では医療的ケア児の預かり先不足解消に向けて、認可保育園で医療的ケア児を受け入れようとする動きも出てきています

フローレンスは昨年より渋谷区の依頼を受けて、区内の保育園を対象に医療的ケア児受け入れの研修、サポートを実施しています。

初年度は大向保育園が医療的ケア児の受け入れを決定し、フローレンスは座学の研修のほかに定期訪問を行い受け入れサポートしてきました。

大向保育園では今年度の研修も既に始まっており、保育園のニーズに合わせて継続してサポートを行っていく予定です。

今回の記事では、大向保育園に対して1年間どのようなサポートをしてきたか、今後どのようなサポートを実施していくかをお伝えします!

フローレンスの保育士が研修を実施し、看護師が大向保育園に定期的に訪問

大向保育園で初めてお預かりした医療的ケア児のAちゃんは、2歳の重症心身障害児で経管栄養を必要としています。

自分で自分の膝の脱臼をすることがあり、身体がこわばりやすいお子さんです。

大向保育園で働く主管看護師の梅田さんは小児看護、担当看護師の梅本さんは在宅看護の経験があり、「受け入れることへの心理的なハードルは高くなかった」ものの、保育園としては受け入れの準備のためにどこから整備してよいか分からない状況でした。

また、保育士は障害のあるお子さんに初めて接する人も多く、身体がこわばりやすいAちゃんにとって心地よい抱っこの仕方、経管栄養からの注入の時やお昼寝の時の姿勢のとり方などに戸惑う人もいました。

フローレンスでは森永による研修を行ったり、障害児保育園ヘレンでの見学会を開催。

また、看護スーパーバイザーの高橋が、最初は2週間に1度・3ヶ月目からは毎月、大向保育園に訪問して看護師や保育士からの質問に答え、疑問点を一つ一つ解消していきました。

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大向保育園での研修の様子(リラックス体操)

「訪問をしていく中で徐々に適切な受け入れ体制が整っていった」と看護スーパーバイザーの高橋。

例えば、入園当初は、痰が絡んだり、むせ込みがあったりした際の医師からの吸引の指示が出ていませんでした。

そのため、Aちゃんにうつ伏せや横向きの姿勢をとってもらい、「ゴホンしてね」と声かけをして咳を誘導することで、自分で痰を出してもらっていました。

保育連絡帳に痰が多いことを記録して、吸引の必要性を保護者を通じて医師へ打診し、医療的ケアの指示に吸引を追加してもらえるようになりました。

Aちゃんの膝に他のお子さんが頬をつけて愛情を表現 子どもは子どもの中で育つ

Aちゃんは衛生面・環境面・発達面を考慮し、0才児クラスに参加することになりました。

最初は保育室のコーナーで過ごす時間が多かったAちゃん。

一緒に過ごす時間が増える中で、Aちゃんが他の子におもちゃを拾ってもらう姿が見られるようになりました。

また、保育者が特別何かを教えたり促したりしたわけではありませんが、Aちゃんが注入をするときには他の子が「マンマ」と話かけるなどの自然な関わりが見られるようになってきました。

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大向保育園 看護師の梅田さん

ある日、看護師の梅田さんは、早生まれのお子さんがやっと歩けるようになった時、よちよちと歩いてAちゃんが座るラックの方に行き、Aちゃんの膝に頬をつけて寝るような仕草をしたのを見ました。

「まだお話のできない子だったので彼女なりの愛情表現だったのだと思います。Aちゃんは子どもの大きな声によく反応し、ハッとそっちを向くような仕草を見せます。保育士の穏やかな声だけでなく、そういった子どもの予測できない関わりが大切で、子どもの中で育つ意義を日々感じています」と愛情あふれる表情でお話してくれました。
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大向保育園の柴田園長

柴田園長は、障害のあるお子さんとこのような深い関わり合いをするためには、行政との関係やサポート体制が重要と言います。

「Aちゃんが保育園にいてくれることで、子どもたちの中に自然と人を思いやる心が成長しています。このような園が増えていくためには行政のサポートも大切。Aちゃんのような医療的ケアのあるお子さんも穏やかに楽しく過ごすためには設備が必要です。渋谷区は適切なサポートをするための努力を重ねているところです。」

障害の有無に関わらずどんな子どもも保育・支援を受けられる社会を目指す

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フローレンスの保育研修育成担当の森永による今年5月の研修の様子

5月、フローレンスは大向保育園で2年目となる研修を実施しました。

昨年度は医療的ケア児を受け入れるのが初めてということもあり、研修では、「医療的ケア児とは何か」「遊びの大切さ」「保育士と看護師によるチーム保育」についてお伝えしました。

今年度はさらに一歩踏み込み、受け入れ園児の将来を想定した地域での連携や、個別の発達に応じた支援計画、といったテーマも加わりました。

9名の保育士が研修に参加し、森永のプレゼンテーション終了後も、より良い保育とは何か、地域での連携を実施するには何が必要か、活発なディスカッションが行われました。

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研修後の森永と大向保育園の先生たちとのディスカッション

今年もフローレンスの看護スーパーバイザーの高橋が大向保育園に継続して訪問するとともに、運営や保育に関する相談に電話やメールで随時対応することで、安心して大向保育園で保育をできるようにサポートしていきます。

「子どものケアを担う家族が家庭の外にも目を向けて、楽しく暮らしていけることが一番です」と高橋は語ります。

「サポートが増えると親の笑顔が増え、その様子を見て子どももとても良い表情を見せてくれるような気がします。そうして、みんなが”スマイル”で生活できるといいなと思います。障害児保育園ヘレンでも、みんなでお散歩に行くと、地域の人たちが笑顔で声をかけてくれます。障害児保育を通じてスマイルの輪が広がっていったら嬉しいですし、私自身も、今後も他の地域での受け入れ拡大に貢献していきたいと考えています」

渋谷区は今後医療的ケア児の受入について、当該児童の安全な受け入れを大前提として園を取り巻く状況を総合的に勘案して検討していく予定で、フローレンスでもサポートを継続していきたいと考えています。また、渋谷区以外でも研修を実施する予定です。

医療的ケア児の預け先が極度に不足する「医療的ケア児保育問題」。

全国の医療的ケア児家庭を支えるには、事業者の枠を越え、多くの人たちと手を取り合ってこの課題に取り組んでいく必要があります。

フローレンスは今後も医療的ケア児保育・支援事業を展開し「小さな解」を作り出すとともに、そのノウハウを提供することで、医療的ケアの有無に関わらずどんな子どもも保育・支援を受けられる社会を目指します。

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