医ケア児ママの「もう一度はたらく」を実現する新規事業!事業化までの道のり(1)~一緒に一歩を踏み出す~
2021.05.25
こんにちは!医療的ケア児保護者の「もう一度はたらく」を実現するプロジェクト「医ケアママ・ワークアゲイン大作戦」を担当しているパー子です。
現在、医療的ケア児の母親であるテストユーザー2名を含む、8名のプロジェクトメンバーと共に、事業化に向けて、日々、爆走中です。
今回から4回にわたり、プロジェクトがこれまでやってきたことや、今、まさに奮闘中のプロジェクトの様子、テストユーザーの生の声などをお伝えしたいと思っています。事業化までの道のりに、ぜひ、お付き合いください!
第1回の今回は、フローレンスがこのプロジェクトを立ち上げるに至った、医療的ケア児保護者の皆さんの声と「医ケアママ・ワークアゲイン大作戦」の中身をご紹介したいと思います。
「『預け先さえあれば、働ける』わけではない」
障害のある子どもの預け先が極端に少ない障害児保育問題を解決すべく、フローレンスは、2014年に障害児保育園ヘレン、2015年には障害児訪問保育アニーを立ち上げて、障害の有無にかかわらず、「すべての子どもが保育を受けられ、保護者が働くことを選択できる社会」を目指してきました。
でも、フローレンスには、医療的ケア児の保護者、特にケアをメインで担っているお母さんたちから、こんな声が届いていました。
「『預け先さえあれば、働ける』わけではない」
「仕事をしたい」という気持ちはあるけど、それができないのは、預け先が無いことだけが原因ではない ー その声の背景には、どんな事情があるのだろうか。医療的ケア児保護者が抱えている実情を知りたい。そして、解決したい。
そんな思いにかられ、私たちは「医ケアママ・ワークアゲイン大作戦」と銘打って、代表の駒崎をはじめとしたプロジェクトチームを結成し、「働きたい気持ちはあるけれど、働いていない医療的ケア児のお母さんたち」に話を聞いてみることにしました。
周囲の目、ケアとの両立への不安、キャリアのブランク――親御さんに立ちはだかる壁
「『預け先さえあれば、働ける』わけではない」。そのわけは、人によって、色々でした。
①「子どもに障害があるのに、働きたいの?」周囲の目
ひとつには、障害児の親、特に母親に対して「家にいて子どものケアに専念すべき」という社会的な価値観が根強い、ということがありました。
ママ友などの周囲の声や、ご家族の意向に押されて、お母さんが自分の仕事を続けたい気持ちを押さえて離職しているケースもありましたし、周囲から「子どもに障害があるのに、働きたいの?」と言われ続けるうちに「働きたいと思うことは、おかしいことなのかな」と感じられて来て、なんとなく仕事をあきらめていくケースもありました。
②「我が子のそばにいてあげたい」障害の重い子どもを預ける不安と葛藤
お母さん自身が、お子さんのケアに十分な時間をとりたい、なるべくお子さんのそばにいたい、と考えて仕事をやめているケースもあります。
医療的ケア児は、その障害の種類や度合いによっては、短時間でも目を離すことで命にかかわるお子さんがいます。体調が安定せず、入退院を繰り返すお子さんもたくさんいます。
「仮に、子どもを預けるとしても、本当に安心・安全か、信頼できるのか、というのがすごく気になりますよね。それに、我が子が大変な思いをしているときには、やっぱり、自分がそばにいてあげたいんですよね。」と、あるお母さんは話してくれました。
③体力的にケアと両立できない、精神的に立ち上がれない
「働きたい気持ちはあるのですが、私自身にフルタイムで仕事をする体力が残っていないんです。」という声もありました。
「うちの子は夜間のケアもあるので、支援者さんがいない夜中は、自分たち親が何度も起きてケアをしないといけないんです。なので、日中、支援者さんが来ている間などに休息をとらないと体力が持たないんですよね。だから、フルタイムで働くというのが、難しいんです。」
「うまれた子どもに障害があるということのショックが大きすぎて、しばらく『働く』ことなんか考えられなかったです。」と話すお母さんもいます。
「やりたい仕事はありました。でも、我が子のことも、自分の人生も、なかなか受け容れられなかった。こんなはずじゃなかった。なんで、私や我が子がこんな目に? そんなことばかりを考えて月日が経ってしまった。そこから、たった一人でもう一度立ち上がるのは、ものすごく勇気とエネルギーが必要で、とてもハードです。」
そして、何人ものお母さんが口にしたことがあります。
「既に仕事を辞めてしまっていてブランクがあるから、再就職には不利になっていると思う。」
「ブランクが長く、仕事に復帰できるのか、通用するのか、不安。」
「はたらく」を希望する人がはたらける社会にするために「大作戦」を決行します。
そんなお母さんたちの声を受けて、まず、私たちは、次の2つのことを実行したいと思います。
① 医療的ケア児保護者が安心して再就職までの助走期間を過ごせる週12時間の「ワークアゲイン・プログラム」を提供します。
プロジェクトに参加される保護者のみなさんには、1年間、フローレンスの一員として実務を経験していただきながら、PCスキルやライティングスキルなど、これからのキャリアに役立つようなスキルを身につけていただきます。
② 保護者のみなさんがプログラムに参加されている間、保育の研修を受けた看護師がご自宅を訪問し、医療的ケアのあるお子さんをお預かりします。
また、お預かり中は、ケアをするだけではなく、それぞれのお子さんにあった保育内容を組み立て、ワクワクした時間を過ごすので、お子さんにとって新たな世界が広がる豊かな経験となります。
お母さんにとっても、一緒に子育てを担う心強い仲間ができることになります。
お子さんを預けることに躊躇があったり、罪悪感をおぼえてしまったりする親御さんも、「我が子のためにも良い選択」と思っていただけるのではないかと思っています。
これが、私たちの「医ケアママ・ワークアゲイン大作戦」の最初の一歩です。
一般的な「働く」「労働」ではなく、ひろく豊かな「はたらく」を目指し、私たちにできることを一つひとつ実現させて、「はたらきたい」という気持ちのある人が、それを選択したいと思ったときに選択できるように、私たちは、日々、走り続けています。
次回からは、私たちの取り組みの様子を紹介したいなと思っています。
一生懸命生きてきた子育ての時間は、ブランクじゃない。
今回、医療的ケア児のお母さんたちとお話する中で、「ブランク」を心配する声と同時に、「医療的ケア児を育てた経験を、次につづくお母さんたちのために活かしたい。」「医療的ケア児の親であるという当事者の立場から世の中を変えて行きたい。」という声も、たくさんお聞きしました。
そして、私たちも「みなさんがこれまで一生懸命に生きてきた子育ての時間はブランクなんかじゃない。職歴と同じように、みなさんの『経験』です。」と声を大にして言いたい気持ちでいます。
一度離職したせいで就労の機会が得られないとしたら、それは、社会にとっても損失だと思うし、それだけでなく、みなさんのご経験を持ち寄ることで、社会は、医療的ケア児とその家族にとって、少しずつ生きやすくなっていくんじゃないか、と思っています。
キラキラとワクワクに満ちた、ご自身やお子さんのみらいと、社会のみらいを、共に描けたら、と思っています。
再びはたらきたい医療的ケア児の親御さんと一緒に、第一歩を踏み出しませんか?
そんな「医ケアママ・ワークアゲイン大作戦」は、9月に事業化&本格サービスイン予定です!
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