障害児訪問保育アニー ~子どもの「やりたい」気持ちを広げ、生きる力を育む~【7月保育塾レポート】
2021.01.24
フローレンスは、月に一度、社内のスタッフが自身のスキルを高める機会として、自主参加型の保育研修「保育塾」を開催しています。
現場スタッフの「知りたい!」「学びたい!」に応えられるように、毎月違うテーマで研修を行っています。
7月保育塾では、障害児家庭に訪問し、保育スタッフと訪問看護師の連携により保育を行う、障害児訪問保育アニーについて学びました。
講師には、障害児訪問保育アニーでこれまで4名の保育を経験している岡本雅奈美さんを迎え30人の参加者で開催!
希望者にはZOOMを使用しオンラインで参加してもらいました。
※新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑み、緊急事態宣言下では完全オンライン開催(ご自宅からの参加)に変更しています。
他職種と一緒に作る障害児保育
障害児訪問保育アニーでは、医療的ケアや医療の視点を必要とする子どもの保育を行っているため、訪問看護師と協力し安全な保育を守っています。
乳児期の保育では「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つの領域が密接に繋がっています。
この領域を看護師と保育スタッフでどのように支えているかを表したものがこちらの図です。
(【注】アニージャンヌ:障害児訪問保育アニーの訪問看護師)
岡本先生は、保育に入る中で看護師に助けてもらうことが多く、保育スタッフ一人では何もできないと絶望していたときもあったといいます。
しかし、看護師と連携を取るうちに、医療の立場から支えてくれるのが看護師、毎日の保育を支えているのが保育スタッフと考えるようになりました。
上記の図から分かるように養護分野は看護師だけではなく、保育スタッフも関わり、反対に教育分野は保育スタッフのみが担うのではなく、看護師も関わるなどその時々で関わり方は変わります。
そして看護師と保育スタッフの分担割合はそれぞれの子どもによっても変えているとのことで、まさに子どもに合わせた保育の実践と言えますね!
さらにアニー保育を深く紹介すると下記の図のようになります。
アニーでは、現在38名のお子さんを預かっています。(※2021年時点)
子ども一人にひとりに保育スタッフが担任としてつき、一人ひとりの状態に合わせ、看護師は最善の関わり方をしています。
看護師は訪問看護を行いながら一人ひとりに合わせてアドバイスをし、ときに一人で保育を行っているスタッフの話し相手にもなります。
一人ひとりに合った関わり方を行い、みんな同じ関わり方ではないというところがポイントです!
そこに現場で働くスタッフをそっと包み込むように事務局スタッフがいます。
このように障害児訪問保育アニーは多くのスタッフが専門性や特性を補い合いながら協力し日々の保育を守り、こどもの成長を支えているのです。
「やりたい」気持ちを広げるために大切にしていることとは?
『「やりたい」気持ちを広げ、生きる力を育む』とはアニーの保育理念です。
やりたい気持ちを広げるためには、やってみたいと思える状態にしていく必要があります。
子どもがやってみたいと思える状態を作るためには、体調が整い、気持ちの安定があった上で「この世の中にはこんなものがあるんだ!」とたくさんの「知る」機会を作ることが大切です。
例えば、お散歩中に鯉のぼりを見つけ「見て見て!鯉のぼりがあるね!」と指を差し、子どもに言ったとします。
しかしこのコミュニケーションは子どもがそもそも「鯉のぼり」を知らなければ、認識できず成り立ちません。
またアニーでは視力が弱い子どももいるので、保育者が指差すものを的確に捉えることが難しいこともあります。
そのため岡本先生は実際の鯉のぼりを持っていき「これが鯉のぼりだよ」と鯉のぼりそのものを知ってもらう機会を作るなど、子どもに合わせた工夫を行っています。
「やりたい」気持ちを広げるためには、いろんなことを知ることができる、関われる環境づくりを意識することが大切だと感じました。
入社当時、岡本先生は障害児保育の経験がありませんでした。
そのため「やりたい」気持ちを広げるために刺激のある保育環境を作るぞ!とは意気込んでいるものの、目の前にいる子どもが体調を崩してしまうのではないかと不安になり、抱っこすら抵抗があったとのことです。
しかし、保育をしていく中で子どもの目線に立ったとき、「安全性高く、体調を崩すリスクが低くなったとしても、それは、子どもにとって楽しいことなのかな..」と考えるようになったそうです。
例えば、誰にとっても自宅でゆっくりと過ごす時間は大切ですよね。
特にアニーでお預かりしている子ども達は、入退院を繰り返すこともあるため自宅で過ごせること自体が幸せで、必要な時間です。
だからこそ今という時間を楽しめているか、いかに良い時間にできるかという点が大切で、より良い時間を作っていくために、子どもとコミュニケーションを図りながら一緒に作り上げていく保育を意識しています。
見えていても見えていなくても楽しめる保育
ここからは実際に岡本先生が行っている保育を紹介します。
岡本先生はより良い保育を行うために、子どもに合わせて五感を刺激することを意識し、さらには、五感を活かし、季節を感じることも大切にしています。
岡本先生が「光を感じられるか否か微妙な」視力の子どもを担任していたときの事例です。
そのお子さんは視力に障害を持っているため、実際に天気やカレンダーを見ることが難しく、朝の会をどのように行うか試行錯誤したことがあるそう。
朝の会の中で、天気を伝えるときに使ったのは、ライトと布。
晴れていてるときは、ライトを付け光を感じてもらい「晴れだね」。
曇りのときは布を触ってもらい「ふわふわ」だね、雲みたい。
雨のときは布を濡らして、「雨だから外はビショビショ」ということを知ってもらう。
また暑い日はホッカイロを触ってもらい、暑いから今日は外遊びできないことを伝える。
寒い日は保冷剤を使って「今日は雪が降りそうだよ、こんなに冷たい気温だよ」と伝える。
このように視覚で伝えることが難しいときは、感覚遊びをながら感じてもらっています。
お子さんの興味に合わせて一緒に作る保育
どの保育現場でもそれぞれの子どもに対して「ねらい」を持ち保育を行うと思います。
岡本先生が大切にしていることは「ねらい」に向けて、興味の方向性から保育を変え、こどもと一緒に保育を作ること。
障害児訪問保育アニーは1対1の保育だからこそ、その子の要求にどう応じていくかを考えることができます。
ワークショップ
【経管栄養でまだ食事トライをしていないお子さん。食べられないけど、スイカをどう伝える?】
保育塾では、事業部を超え様々な保育観に触れ学びを増やしてほしいと考えています。
そのため毎回参加者同士でグループを作り、ワークショップを行っています。
今回のお題は【口からご飯を食べることが難しいで子どもに、『スイカ』というものをどうやって伝えたらいいでしょうか?】でした。
それぞれのグループからはこんな意見が出てきました。
「スイカを育ててみる?育てた上で実物を触ってほしいよね!」
「スイカ割りをしてみる?」
「スイカの歌や絵本を読んだらイメージを付けられるかな」
「夏の食べ物なので季節に紐付けられるようにしたい!」
ワークショップを通し、たくさんの意見が飛び交いました。
私ひとりで考えるとスイカを触ってもらったり、匂いを嗅いでもらったりと五感で感じてもらうことくらいしか思いつきません。
ただワークショップを通し飛び交った意見は全てお子さんのことを第一に考えたからこそ出た意見でした。
まとめ
今回の保育塾では、障害児訪問保育アニーから『「やりたい」気持ちを広げ、生きる力を育む」』ために大切にしていることを学びました。
医療的ケアを必要とする障害児保育を行っているので、子ども達の安全を保ちながら保育を行うことが第一です。
しかし、安全であればいいという訳ではなく、子どもの「やりたい気持ち」に向き合うことも重要です。
そのために、保育スタッフ、看護師、事務局スタッフが連携しながら保育を支えています。
保育を支える土台がしっかりしている上で大切にしていることは「知識を繋ぐ」こと。
知識が繋がるということは、それまでバラバラだった知識が保育での経験を通して繋がるということです。
その積み重ねが子どもの「やってみたい」を引き出すことに繋がります。
最後に岡本先生は、お子さんの願い、保育者の願い、保護者の願いそれぞれ間違いはない。ただ一番大切にしたいのは子どもの願いと話しました。
保育塾で学ぶことが出来るのはフローレンスのスタッフだけ!
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